みんなこんにちわ、ぼく良男。
夏休みにみんなでママの田舎に遊びに来たよ。
ぼくの住む街から新幹線で1時間、
それから在来線で5時間半、
さらに小さな電車に45分揺られてやっと到着。
ぼくはこの村が大好き。
のんびりしてて、ちょっと変わってて。
これがぼくのおじいちゃんとおばあちゃん。
農家を引退した今も、畑で野菜を作っているんだ。
おじいちゃんたちと一緒に住んでいるのがトオルおじちゃん。
ママの弟。真ん中の赤いシャツの人。
38歳になった今でも地元の幼馴染と仲良くぶらぶらしてるんだ。
ママは「あんな人間と付き合っちゃダメ。」って言うけど、ぼくは大好き。
だって、会うたびに内緒で1万円くれるんだもん。
外国にだってたくさん行ってるんだよ。
特にフィリピンはいいんだって。
大きくなったら連れってってもらう約束しちゃった。
ああ、楽しみだなぁ。
それまではこの村を隅から隅まで探検するぞ!
これ、今流行のパワースポット。
石にご利益があるとかで、日本中から人が集まってくるよ。
でもママが子供の頃にはこんな石無かったんだって。
なんでも、黒衣を着た坊主、ママの小学校の校長先生だった人で、
いなくなったと思ったら、30年ぶりに突然現れたらしい。
ダンプカーで運んできた石をここに置いて怪しげなことやり始めたみたい。
すごく儲かってて、この村の入り口の大きな街に豪邸があるんだよ。
どうりで、坊主のわりに目がギラギラしてると思った。
みんなが有難がってる石の裏では、
こんなことやってることもぼくは知ってる。
「コラ、良男!」
今日はお祭りの日。
こんなにたくさんの人、どこにいたんだろう。
村の大通りで朝から晩まで踊り狂う、楽しいお祭り。
日本三大奇祭のひとつって言われてる訳は、
疲れてきた頃に牛が放たれるところ。
スペインのサン・フェルミン祭に憧れたこの村の名主が始めたんだって。
駅も好きなんだ。
色んなドラマがあって一日いても飽きないよ。
この日も村を去る人が。
「正彦さん、待って。」
「おかみ、来てくれたんですね。」
「はぁ、はぁ。良かった、間にあって。」
「そんなに急いで、なんですか。」
「あの…。」
「なんです、はっきり言ってください。」
「あの…、ツケがたまってるんですが。」
「電車が来たので失礼します。」
のんびりベンチに座ってる人もいる。
「いんやぁ、今日も暑いっぺなあ。」
「そうだなぁ、俺も働くの嫌になっちゃったよ。」
「おめえ、運転士のくせにそんなこと言って今日何本電車見送ったよ。」
「朝と昼で2本だよ。もともとが本数少ないから大丈夫だよ。」
「馬鹿野郎、おめえは昔っからそうだっぺ。さぼってばっかりで。」
「うるせえなぁ、母ちゃん。職場にまで顔出さないでくれよな。
もう帰ってくれよ。」
こんなことをやってるとあっという間に日が暮れてしまうんだ。
楽しい時ってどうしてすぐに終わっちゃうんだろう。
また電車に乗ってぼくの街に帰る日がやってくる。
さよなら、おじいちゃんおばあちゃん。
今度は桜の時期に来たいな!
追伸:こんなことをして現実逃避をしている時、
たまたま読んだ新聞のコラムに
「現実との関わりが強い男ほどモテる」ということが書いてありました。
なるほどその通りだと実感しました。
なるべく早いうちに8月の予定を掲載したいと思います。