噺の舞台を歩く

「鉄道戦国絵巻」の第3弾。

今回は、東急7人衆の一員でありながら田園都市線から
一緒に戦うことを拒否されるという哀しみを背負った世田谷線です。

世田谷線って?
下高井戸~三軒茶屋を結ぶ。
線路に生い茂る雑草にもめげず2両編成で疾走。(車掌さんは女性。)
駒次のハイスクールライフの舞台。

よく世田谷線沿線は時間の流れがゆっくりだと言われますが、
それを実感させる光景がいきなり目に飛び込んで来ました。

沿線の文化を担う下高井戸シネマと三軒茶屋中央劇場。
公開作品にもタイムラグを生じます。(H21・5・2現在)


高校時代下高井戸シネマで初めて怖い映画を見た。
“セブン”と”コピーキャット”の2本立て。


“おくりびと”やっと上映。


目下、マリリン・モンローがブレイク中!

しかし、どんどん世田谷ディープゾーンに分け入って行くと、
これらはまだ序章に過ぎなかったことに気づかされます。

とくに宮の坂~松陰神社前間は幕末のまま時間が止まっています。
豪徳寺(宮の坂下車徒歩5分)には井伊直弼、
松陰神社(松陰神社前下車徒歩3分)には吉田松陰。
そう、1駅はさんで”安政の大獄”の敵同士が眠っているのです。

しかし、そんな不穏な空気も世田谷線沿線では
招き猫VS松陰饅頭という呑気な名物対決に変貌してしまいます。


豪徳寺は招き猫発祥の地。


にゃんまげ、ひこにゃんにつぐ日本3大にゃんと言えば
豪徳寺のたまにゃん。


松陰神社駅前に堂々と掲げられた看板。
松陰饅頭”名物にうまいものあり”

ひるまずに進むと今度は磁場がくるって、
富士の樹海に迷い込んだような錯覚に陥ります。


樹海への入り口。いえ、銭湯の入り口でした。
“私有地につき利用者以外の通行はお断り致します”


密林にてかっぱに遭遇。
黄桜?映画館ですよね。


ミシンの波状攻撃!

身も心もズタズタに引き裂かれた末に
救いを求めてたどり着いた教会。


ここにも蒲田色(池上線の章参照)が!罠だったのか。

最後に漂泊者が流れ着くのは三軒茶屋です。
すがるように仰ぐキャロットタワーは
大いなるものの存在すら感じさせます。


建設中は世田谷線の三軒茶屋駅が
西太子堂駅方面に移動させられるという試練を与えられる。


キャロット城下町の風情。


ほら、ここにも。

最後に沿線随一のハイライトをお送りしましょう。


貨物列車マンション。
家政婦もびっくり。

私が大学生のころまでは緑色の木造の電車が走っていました。
2両目の連結部の窓を開けて顔面に風を受けながら乗るのが、
世田谷線スタンダードでした。
フォーエヴァー世田谷線!

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噺の舞台を歩く

落語の世界を旅するこのコーナー、
前回に引き続き「鉄道戦国絵巻」です。

今日は目黒線・多摩川線をとりあげます。
東横線の陰謀によって南北に引き裂かれるという悲しい過去を持ちながら、
姉妹で健気に戦う姿は多くの人の胸を打ちました。

目黒線・多摩川線とは
目蒲線が2000年に分かれた。
目黒線は目黒~多摩川、6両編成に出世。
多摩川線は多摩川~蒲田、3両編成のまま。

しかし、久しぶりに見るふたつの路線は違う意味で私の胸を打ったのです。
銀幕の世界に羽ばたき数々の名優と浮名を流す姉・目黒線と、
ボロをまといながらかぼちゃの馬車を夢見る妹・多摩川線。
かつての幸せな日々はもうそこにはありません。

象徴的なのが多摩川駅

高架の上では目黒線が東横線と肩を並べて疾走します。
一方、多摩川線は座敷牢のような地下ホームにひっそりと佇んでいます。

多摩川線は数々の辛酸をなめさせられます。

まずエスカレーター。
目黒線のホームへは絶えず動き続けるエスカレーター。
多摩川線へのエスカレーターは人がいないと止まります


右は目黒線へ、左は多摩川線へ。
多摩川線のほうがきれいじゃん。
だまされてはいけません。これは”蒲田色”(池上線の回参照)だ!

そして駅舎自体にも差別が。
駅ですわよ!声高な目黒線の駅舎。


「俺は目黒線に乗るんだ!」
なんという晴れがましい気分。

駅ですいません。声低な多摩川線の駅舎。


「ここで会ったことは内緒で。」

同じ素材でベンチを作っても出来上がりが違います。


質素を絵に描いたような多摩川線。


目黒線は金属と組み合わせてスタイリッシュさを強調。

さらに追い討ちをかける悲劇が起こります。
池上線御嶽山駅の雪辱(池上線の回参照)をここで晴らされてしまうのです。


沼部駅上空で轟音を轟かせる新幹線。

蒲田に近づくと「あ、かぼちゃの馬車が!」
違いました。
観覧車でした。(1回200円、所要時間約3分)


カプセル越しに蒲田駅へ到着する多摩川線が。

目黒線はものすごい勢いです。
地下化された武蔵小山・西小山のいわゆる東急二大小山では
駅前広場も完成間近です。

しかし地下化という発展で人々の心に芽生えたのは、
なくしたものへの絶ちがたい思いです。

沿線を歩けばあちこちに発露しています。


失った大空への希求。
誰か屋根を外してあげてください。


どこまでも飛んで行ける!


でも安心して。必ず帰ってくるから。

上昇志向の強い目黒線では時計もプレッシャーをかけてきます。
「早くセコムの似合う家に住めるようになりなさい!」
現代では”セコム”が”うだつ”と同意義で使われているようです。


見上げるたびに決意を新たにする。


無言で反抗する時計もあります。

目黒線と多摩川線。
こんなに素晴らしいコンビがあるでしょうか。
太陽と月、いや月とスッポン。
どちらも愛しています。

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噺の舞台を歩く

落語の舞台を訪ねるこのコーナー。
第1回目は古典落語の『鉄道戦国絵巻』です。

あらすじ
突如、東横線が東急電鉄を脱退しJRに寝返った!
未曾有の危機を乗り越えるため、残されたものは立ち上がった。

今日は、この噺の主戦場となる池上線沿線を取り上げます。

東京にも桜の便りが届いた3月21日。
花の香りに誘われて池上線を訪ねました。

池上線とは
五反田~蒲田間を結ぶ
いまだに3両編成
五反田と次の大崎広小路間が極端に短い
こんな電車です。


度肝を抜かれた新型車輌。迷彩?

まずは五反田駅からスタート。

山手線の頭上、地上4階に池上線のホームはあります。
街のはるか上を”ズドンズドン”と音を立てて行き来する様は、
『天空の城ラピュタ』の鉱山鉄道のようです。

ホームからの景色は素晴らしいものがあります。
大崎方面を眺めて下さい。
目黒川をまたいでJRの4本の線路がまっすぐに伸び、
その先には高架の上を新幹線が流れ、
さらに頭上を羽田空港から飛び立った飛行機が行く。
そんな光景を見ることが出来ます。(夜は特に素敵です。)

私はこの噺の作者に言いたいのです!
五反田をけなすな、と。
ここに立てば彼もきっと改心してくれることでしょう。

終点は蒲田駅です。

蓮沼駅を過ぎると、
目黒線と分断された悲劇の電車、多摩川線が右側から近づいてきます。
沿線ののどかすぎる風景のせいで麻痺した眼には、
蒲田駅はとてつもなく大きく見えます。

東急発祥の地にふさわしく、ど派手なステンドグラスが迎えてくれます。


セロファンを貼ったわけではありません。


蒲田の人たちはこの色合いが好きなようです。


やっぱり好きなんですね。

いよいよこの噺のクライマックス、御嶽山駅にやって来ました。

JRと東急電鉄が直接対決をする御嶽山の合戦の地です。
ここはホームの真下を新幹線が走っている珍しい駅。


池上線に頭上をまたがれるという、
新幹線史上最大の屈辱。

池上線沿線には常識では考えられないものがたくさんあります。


石川台駅の非常用インターフォン。
“旗の台駅係員が応対いたします”


世界最小の米店。

こんな池上線ですが、都心では珍しくなった木造の駅舎が残っています。
駅前の商店街からそのままホームに行ける気軽さは、
都会のオアシスのようです。


木のイス。見よ、この低さ、この角度。


池上線の駅は、木と紙で出来ています。ウソです。

今後は、この噺を彩る脇役陣を紹介して行きます。
お楽しみに!

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ナクソスよ、永遠なれ!

みなさんはナクソスを知っていますか?

クラシック音楽中心の一風変わったレコードレーベルです。
その特徴は

①選曲が独特。(埋もれている作曲家を発掘。)
②無名でも実力のある演奏家を起用。
③価格が安い。(最初はここに惹かれて買い始めた。)

といったところが挙げられます。


オンド・マルトノ作品集なんというのもある。

ですが、私がもっとも愛するのは、
CDの裏に書かれた曲の聴きどころ解説です。

気取りというものを微塵も感じさせず、
易しく、楽しく、時にはツッコミも入れつつ、
「これ聴いてみたい!」と思わせる技術は、もはや神業です。


曲目カードのここ!

今日はその一部をご覧下さい。

グローフェ・組曲「グランドキャニオン」
(アメリカ横断ウルトラクイズのテーマ曲も収録)

「アメリカの名匠グローフェによる、とってもわかりやすいネアカ娯楽作を
お届けします。」
のっけからとっつきやすさを強調します。

「題名さえわかれば解説無用、あるいは聴いただけで題名の
見当がついてしまう単純明快さは楽しいことこの上ありません。」
わかりやすさを強調しすぎて、イジリにすら聞こえます。

「特に「豪雨」「瀑布の轟き」「ナイアガラの力」(オススメ!なんと水力発電所音楽です)といったナンバーでの「ここまでやるか!」といいたくなるような徹底したスペクタクルぶりは、快感の領域に達しています。」
たしかにタイトルが能天気です。

どうです、聴きたくなったでしょう。

ここで、他のレーベルと比較してみましょう。

ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第一番」(ドイツ、山田耕筰の師匠)

あるレーベル
「いきなり流れ出すヴァイオリンの甲高く、しかし朗々とした響きのふくらみ、
完璧なトリルとオクターブを駆け巡る音程の決まり具合は圧巻。
濃厚なロマン漂うこの曲にあっさり対して楽曲の深みを十全に引き出した
この演奏は、きくたび感動で鳥肌が立つ超名演。」

ナクソス
「小難しい理屈はどこかにふっ飛ばし、
感傷的かつカッコいいメロディーはてんこ盛り。
独奏ヴァイオリンも、オーケストラもパワー全開で煽りに煽ります。
テクニシャンのフェドートフはこうした楽曲の持ち味をストレートに引き出し、
快刀乱麻の大活躍を見せ付けます。」

恐らく、言いたいことは同じなんだろうと思います。

これ以外にも、小ネタがキラ星のごとくちりばめられています。

「冒頭は地味ですが、飛ばさないでください。」
(クレストン・交響曲第二番)

「1トラック60分越えというのも、聞き手にとって試練ですが、」
(ジェフスキ・不屈の民変奏曲)

「やっぱりアメリカは強い!」(タワー・メイドインアメリカ)

「心臓に悪い一曲ですので、十分に覚悟を決めてお聴きになられて下さい。」
(ペンデレツキ・広島の犠牲者に捧げる哀歌)


まさにクラシック界の休憩室。
ナクソスよ、永遠なれ!
※ナクソスのまわしものではありません。

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スクープ!!

駒次第一詩集発見

20世紀最大の発見と言われた死海文書以来の大発見!

先ごろ、駒次宅の本棚裏から
駒次が10代最後の夜に自費で上梓した詩集が出土した。

表紙は黒一色(一部ピンクの枠にNOTICEと書かれている。)で、
当時の暗黒の心情が表現されている。
内容は、恋の悩みを原動力にした熱情的(ストーカー的)な文句が、
延々とつづられている。

世紀の発見を記念して、その一部がおしげもなく公開された。

注:鳥肌ものです。最後まで読めたらすごいです。

『サテライト』

つきが、地球を見下ろしてる。(①)
地球のこと全部、知ってるような顔で。(②)
けれど、永遠にふれ合える予感もないような顔で
つきが、地球を見下ろしてる。

暗い夜道が明るい理由も
海の潮の満ち干きも
自分の仕業だって
君さえ気づかないほど弱々しく
無表情に、主張してる。(③)

自分の居場所を知らせる手段さえ持たずに
誰かの助けを得てもなお(④)
見上げなければ、気づかぬ輝きしか持たないぼくは(⑤)
君がくれた光でさえ、深い闇に変えてしまう。

君とすれ違って、君を追い越して、
君から目をそらして、君から立ち去って、
君としゃべらないけれど、君に笑いかけないけれど、
ぼくは言ってるんだ、此処にいるって。(⑥)

ぼくが、君を見つめてる。
ずっと遠くで、見つめてる。(⑦)

脚注
①自らを月に例える手法は、当時心酔していたCHAGEから拝借。
ASKA(太陽)に対してCHAGEは自らを月に例えた。
駒次は目が細いということからCHAGEに親近感を感じていた。
②どんな根拠があんねん。
③だから、根拠はなんやねん。
④友達はいたらしい。
⑤「なあ、駒次が話があるって。」
「え?駒次?誰それ。」
⑥ぜんぜん言ってないじゃん。
⑦電信柱の陰から、見つめてる。


日本に失望し、”自分探しの旅”へ。
現地の人にまぎれる。
インドネシア・ジョグジャカルタにて。


やっと分かり合えたね。

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