噺の舞台を歩く

噺の舞台を探訪するシリーズ、
今年は「鉄道戦国絵巻」の登場人物にスポットを当てています。

いよいよあの電車の登場です。
社長にその存在を忘れられ、
失意のどん底に沈む姿が人々の涙を誘ったこどもの国線です。

こどもの国線ってえと?
*長津田~恩田~こどもの国を結ぶ。(駅3つ。)
*横浜市随一の田園地帯を走る2両編成。
*単線。

田園都市線がその名の通りの景色を車窓に写し始めると、
やがてこどもの国線の起点、長津田駅に到着します。

両路線は仲間でありながら、
乗り換え時に一旦改札を出なくてはなりません。
「一緒にしないでくれ!」という田園都市線の思いが伝わってくるようです。

しかもこどもの国線には改札がありません。
「電車扱いしてほしい・・・。」というつぶやきを耳にした気が。

これから夢の国へ飛び立とうとする子供たちに、
この駅は社会の縮図を見せ付けます。


改札どころか道路との段差もないので、
まるで都電に乗るような気軽さです。

10分ほどで終点のこどもの国駅に着きます。
子供たちは長津田駅での悪夢を振り払うように駆け出して行きますが、
大人たちはここでも不安を煽ります。


正門前で配布されていた”ジュニアエラ”。
特集”20xx年、日本が飢える!!”

暗い未来を提示されたことで享楽的な気分になったのか、
入場した途端、
道いっぱいに落書きしまくる子供たちの姿が目に飛び込んで来ました。


これが”夜露四苦”や”天上天下”に変わって行くのか。


幼児のたむろったあとには大量の吸殻が!
チョークと分かって一安心。

さらに歩を進めると人間も柵の中で放牧されているに過ぎないという
事実を思い知らされます。


牛さんも。


人間も。

次第にここがこどもの国であることを忘れていきます。
そんなものがあったという事実すら消去されてしまいます。


“こどもの国通り”のはずですが。

だんだん目が慣れてくると、
やはり夢の国であることが分かってきます。


10分で周れる動物園。


自分が子供のときに、
こんなに複雑な遊具があったら
遊び方に悩んだことでしょう。

再び元気を取り戻した子供たちは
明日への希望を胸に家路を急ぎます。

しかしそれは恩田駅付近の東急車両工場を見た時に打ち砕かれます。
修理を待つ車両たちのなんと退廃的な姿。
子供たちにはこちらの方が魅力的に見えることでしょう。

そして彼らは不敵な笑みを浮かべて、長津田をあとにするのです。


幌が魔女の鼻のようです。

たった3駅の小さな路線ですが、離れがたい魔力を持っていました。
こんな電車が存在していることに心から感謝します。


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